Indeed ユニバーシティ:
データ・ドリブンなプロダクト構築

2015年の七月に、Indeed ユニバーシティ(以下IU)がキックオフしました。

これは、12週にわたりIndeedの開発の文化を新しい Indeedians (インディーディアンズ。Indeed社員のことを社内でこう呼びます。) に教える夏季プログラムで、2015年に初めて開催されました。

東京、サンフランシスコ、シアトル、そしてオースティンのオフィスより、五十名以上の新卒ソフトウェアエンジニアが、オースティンのIndeed本社で行われたプログラムに参加しました。

IUでは、Indeedの文化、技術、そしてソフトウェア開発への理念を新入社員に知ってもらえるような新人研修を行いました。主なゴールとして、以下の三つが挙げられました。

  • 新卒社員の新人研修を加速させること
  • 在職中の社員にリーダーシップ育成の機会を与えること
  • Indeedの事業のための新しいアイデアのプロトタイプ化

これらのゴールを念頭に、Indeed のソフトウェアエンジニアに向けた新人研修の新しい方法のテストに乗り出したのです。 IU logo

新入社員研修

通常、新入社員をメンターとペアにします。このメンターは、開発環境のセットアップから、バージョン管理、 A/B テストの定義まで、助けてくれる存在です。もし新入社員からメンターの知識の範疇を越えた質問が出れば、メンターは適切な知識を持つエキスパートを見つける手伝いをします。

私たちは、新しいエンジニア全員に、最初の週のうちに変更を本番に送るように促します。そしてメンターは、学ぶ過程を導き、サポートします。

2014年の秋から 2015 年の春にかけて、 Indeed は米国または日本でコンピューターサイエンスとエンジニアリングプログラムを卒業した51名の新卒の学生を採用しました。

この成長ペースでは、一対一のメンターシップに基づいた新人研修のプロセスを続けられなくなっていました。

しかし、「当事者意識を持ち、コードを本番に送る」という点は、Indeed ユニバーシティでも 忘れずに強調されました。

プログラムの最初の二週間で、全参加者が「ゴング・プロジェクト」を完了しました。その中で、彼らはIndeedのサイト上のA/Bテストを一件定義し、実装しました。そして、実践用カリキュラムに飛び込み、有益な講義に参加し、新規プロダクトをビルドするためのチームを作りました。

Indeed University

仕事場にて協力し合うIU参加者たち

ゴング・プロジェクト

シンプルな変更から新しい仕様まですべてをテストできる自社の能力を、Indeedは誇りとしています。IUのために、この哲学をしっかりと汲み、新入社員が入社一週目にA/Bテストを実装できるように、彼らのためにまっさらなキャンバスを用意しました。

ここで実装したA/Bテストは、給与などの有益なフィルターを求職者がより短期間で仕事を見つけられるようにするものでした。

Indeed University filter by salary

Indeed ユニバーシティでの A/Bテスト スクリーンショットの一例。
これは、求職者が給与で絞り込み検索するように促すもの。

Indeedの伝統では、エンジニアは入社後自分の初めて書いたコードが本番に行くとゴングを鳴らします。IUでも、テストが本番に行く度に皆が集まりました。IU参加者は彼らの実装した A/B テストを説明し、ゴングを鳴らしました。たいてい、とっても嬉しそうに。

Indeed University

ゴングを鳴らす様子

これらのテストをデザインし実装することは、新しいインディーディアンが、核となるプロダクトに新鮮な視点をもたらす機会になります。新入社員がデータドリブンな開発方法を学ぶ上で、仮説を立て、テストをデザインし、結果を分析すること以上に、最高の方法はありません。IU参加者は、我々のデータドリブンな開発手法の文化に直に触れる経験をしました。そうして、これらのA/Bテストから新しいアイデアが出てくるのを見るのはわくわくするものでした。

カリキュラム

ゴング・プロジェクト終了後には、IU参加者は、経験を積んだIndeedのエンジニアによってデザインされた個々のペースに合わせたコースを進めて行きました。

セクションごとにエクササイズが用意され、カリキュラムをより実践的なものにしました。

カリキュラムはエンジニアリングの基礎から始まり、IndeedでWebアプリやサービスを構築するのに使用されるツールや技術なども講義しました。その後、ログの手法(logrepoの使用) やデータ分析 (Imhotepの使用) なども説明がなされました。

テックトーク

IUのテックトークは、プロダクト開発の哲学や市場においての興味深い機会を紹介しました。IU参加者に、Indeedで構築できそうな新しいプロダクトを考えてもらいたかったのです。

Indeed University

ポール・ダーシー氏のプレゼン
「求職者がどのように仕事を探すか」 (写真: ハンナ・スペルマン)

テックトークや、プロダクトに関する詳細な説明は、インフラや技術の更に具体的な詳細を提供しました。典型的なスタートアップとは異なり、IUチームはIndeedのデータやユーザーや、デプロイ、テスト、認証化のためのツールへの、即時アクセスが可能でした。

交流イベント

金曜のハッピーアワーでは、Tiff’s Treatsという店の焼きたてクッキーや、地ビール、沢山のボードゲーム、そしてWii Uなどを用意しました。また、新卒社員の彼らを、Indeedで人気の地元レストランであるフランクリン・バーベキュー (Franklin Barbecue) 、トーチーズ・タコス (Torchy’s Tacos) 、そして 道ラーメン (Michi Ramen) などに連れて行きました。 Round Rock Expressというマイナーリーグの試合にもいきました。また、スタンドアップパドル・サーフィン(SUP)やゴーカート、ペイントボールなどもやりました。極め付けにはオースティン・パニックルームも行きました。

Indeed University paddleboarding

オースティンのタウン・レイクでのSUP

Indeed University social

フランクリン・バーベキューにて

新たなリーダーの育成

また、エンジニアリング、プロダクト、オンラインマーケティングの組織から十二名の新しいリーダーがIndeed ユニバーシティに参加し、イテレーションを用いた、データドリブンな開発のベストプラクティスや、Indeedでのスタイルを教えました。

彼らリードたちは、四、五名の新卒社員を直接マネージメントすることで経験を培いました。そして、最大三チームまで各自アドバイスを行いました。

この経験は、リードたちに毎週の一対一の面談から四半期の評価も含む、エンジニアリング・マネジメントを初めて学ぶ機会を与えました。一対四という割合も、リードと新卒社員が関係を築くのに、功を奏しました。IU参加者とリードは、プロダクトと技術面での挑戦などや、アパートの物件探しなどの普通の相談もしました。

プロダクトチームのアドバイザーとして、リードは「指示」ではなく、「指導」することに挑戦しました。プロダクトのイテレーションの計画や、問題の優先順位の明白化、テストのデザイン、そして結果の分析などをチームに促しました。

言い換えると、リードたちは、Indeedのエンジニアらしい考え方というものを教えたのです。チームには、独立心を持ち、けれど質問を恐れないこと、そしてリスクを恐れず、データを使用して、その結果を図ること、そして、プロダクトに対し当事者精神を持つこと、などです。

新規プロダクト

私たちは、We help people get jobsという Indeed のミッションに焦点を当てて、プロダクトの変化を想像するように、エンジニア全員に促しました。IU参加者は、Indeedの新しいプロダクトのアイデアをブレインストーミングしました。ブレインストーミングのセッションは三回行いましたが、各セッション後に、グループで見つけ出した問題の答えを提案しました。

ブレインストーミングは、Indeedのシニアリーダーシップチーム、IUのリード、そしてその他興味を示したインディーディアンに向けて、最終的なプレゼンを行い終わりました。

Indeed University brainstorming

IUラウンジでのブレインストーミング

ブレインストーミングに続き、IU参加者はそれぞれの興味に則したチームを作り、残りの九週間を実際に動くプロダクトを構築するのに費やしました。自分自身が、プロダクトマネージャー、チームのリード、デザイナー、マーケティング担当、そしてテスト担当として複数の役割を担うことになったのです。

Indeedでは、プロダクトのアイデアを、できる限りたくさん、そしてできる限り素早く探す必要があると信じています。IU参加者には、このエンジニアリング・ベロシティの文化にどっぷりと浸かってもらいました。

engineering velocity

プロダクト開発の始まる前に、すべてのチームが市場調査をしました。チームはIndeed employersと呼ばれるGoogleフォームを作り、Indeed を利用している採用企業に電話をかけ、地元のショッピングモールを無謀にもまわり、小売店のマネージャーや従業員を直接訪ねたのです。

この調査は、チームが仮定した事柄を疑検証し、プロダクトの初期の方向性の決定を助け、そして、早期のプロダクトピボットを生んだのです。

私たちは、各チームに、アイデアの検証ができるようなミニマルバイアブルプロダクト (MVP) を構築するよう課題を課しました。どうやってその価値を立証するか?答えは一つでした―データです。チームは彼らのプロダクトの価値を確かめるためにデータを収集する必要がありました。

IUの各チームにはいくつかの「不公平な強み」がありました。一つにはIndeedのデータが、すぐ手の届くところにあったことです。このデータを利用して、事前調査を行ったり、デザインを特定のユーザーに合わせて調整したりしました。もう一つは、各チームはトラフィック獲得のためのオンラインマーケティングの予算を十分に与えられたことです。これによってGoogle、Facebook、Indeed 求人サイトに広告表示しテストすることで、潜在するユーザーと、一番繫がれるプラットフォームは何かを調べることができました。

毎週のプロダクトレビューで、各チームは進捗をIndeedの上層部やIUのリードたちに向けて発表しました。これらの毎週のレビューで、チームは以下のような質問に答えました。

  • 今週行ったことは?
  • どんなデータを集めたか?
  • このデータから何を学んだか。
  • このデータに基づいて何を行っているか?

これらのミーティングでは、まず小さく始めて、データを以て検証し、そして反復することをチームに促しました。参加者たちは成功するソフトウェアを作ることは、ソフトウェアの構造以上のことがそこにあるということを学びました。

プロダクトレビューは A/B テストの結果のディスカッションや、推測をテストする機会を促しました。多くのチームはランディングページでの高い直帰率に直面し、 A/B テストを実施することで、直帰ユーザーに対する仮説を検証しました。あるチームはランディングページで、新しい Call to Action (CTA) をテストしました。別のチームでは、サインインが必要になるタイミングを遅らせることで、求職者がアカウントを作成する前にプロダクトを体験できるようにしました。

三か月の IU の中で、新卒社員たちは11件の新規プロダクトを生み出しました。

  • 大学生が求人情報を探せる検索エンジン
  • HR担当者たちがデータの動向を探るためのツール
  • 高校生が、興味のある仕事に基づいて大学の専攻を選ぶのを手助けするウェブサイト
  • 求職者にフィルターのかかっていない企業の評判のコメントを提供する、ソーシャルメディアでのセンチメント分析を用いたプロダクト
  • 採用プロセスが進行中の候補者のステータスを企業が管理できる採用支援ツール
  • 求職者の興味に基づく仕事とマッチングできるような一連の質問を投げかけるプロダクト
  • 従業員が、自分の目標に達成するまでの進捗を追えるアプリケーション
  • 地元の販売店や飲食店の求人を探せるモバイルアプリ
  • 企業が候補者を効率的に評価できるように、電話での事前選考を行えるソリューション
  • 地域の、ちょっとした仕事などを探せる単発求人の情報サイト
  • 現在の役職や、希望の役職に基づいてキャリアパスをバーチャルに調べられるサイト

卒業

IUの卒業パーティでは、各チームはそれぞれが構築したプロダクトを紹介し、学んだことを発表しました。5つのプロダクトに対してはIUが終わった後にも、さらなる開発、テスト、そして、その反復を経てプロダクトの検証が行われることになりました。 Indeed University graduation

卒業パーティで、学んだ成果について語るIUチーム

IU終了後、参加者たちは、東京や、シアトル、SF、そしてオースティンのチームに新しく加わりました。プログラムの間に、培った知識、スキル、そして仲間とのつながりを持ち帰った彼ら。こうして、ようやくIndeedに実際に影響をもたらす準備ができたのです。

これを読んでいるあなたが学生でも、業界のベテランでも、Indeed では、私たちのミッション、「we help people get jobs」に力を貸してくれる才能あるエンジニアを探しています。

詳しく知りたい、と思った方は採用情報を是非ご覧ください。