データプロダクトの市場進出に向けた 7 つのステップ
社内ツールにマーケティングが必要な理由
素晴らしいソリューションを開発したのに全然利用されなかった、なんて経験はありますか?正確度、統計的有意性、モデルの種類なども、もしそのデータプロダクトが実際に利用されなければ、問題にもなりません。高い質のデータプロダクトを開発するだけでなく、それを首尾よくローンチしてこそ、データサイエンティストとして、自分の組織に良い影響を与えられるものなのです。
Indeed のプロダクトサイエンティスト(プロダクトサイエンスはデータサイエンスの中のチームです。詳細はこちらをご覧ください !)として、事業のプロダクトと社内のデータプロダクトのローンチについて考えています。こうした状況が、「商品やサービスをローンチする際に使うマーケティング手法は、社内向けのデータプロダクトのローンチにも応用できる」ということを理解する上で役立ちました。この視点を利用して、私は自分が開発したツールを、Indeed で最も使われている上位 10% のツールにまで育てあげました。
以下に、私が行っていることを 7 つのステップに分けました。
- 名前選び/ブランディング
- ドキュメンテーション作成
- チャンピオンの特定
- タイミング
- 支援活動
- デモの開催
- 追跡
1. MBA な名前をつける
プロダクトには、MBA である名前が必要です。これは、Memorable ( 覚えやすいこと )、Brandable ( ブランディングしやすいこと )、そして Available ( 利用可能であること ) を意味します。
Indeed では、毎日内部のレポート用に 500 件以上の Jupyter notebook の web アプリを実行しています。私たちはこれまで 1 万 2000 件以上の IPython notebook のアプリケーションを開発し、デプロイしてきました。こうした豊富なレポート環境の中では、データプロダクトを互いに差別化する方法が必要となります。データを調査し、モデルを開発し、そして出力されたものを検証するのに費やした何ヶ月にわたる期間を、短い言葉にまとめるのは難しいだけでなく、「あのモデル」や「自分が作った収益/求職者の行動/セールスのあれ」などと呼ぶことは、あなたの仕事をふわっとごまかしてしまいかねないのです。
あなたの作った質の高いデータプロダクトを、これまでとこれからのあなたの仕事への貢献ぶりがきちんとわかるような方法で、認識してもらいましょう。
覚えやすさ (Memorable)
Apple や スターバックスは、世界で最も価値あるブランドのうちの二企業です。しかし、Signs.com による調査によると、Apple のロゴを完璧に描けたのは、調査に参加したうちの 20 % のみで、スターバックスの場合はたった 6% であったそうです。これは、名前の力を示していると思います。ロゴやデータプロダクトが、どんな見た目でどんな働きをするか覚えている必要はありませんが、名前で思い出せる必要があります。
覚えやすい名前として、しばし次のようなものとして挙げられます。
発音しやすいこと。尖った、舌を巻くような音で始まります。英語話者を対象とした調査によると、破裂音の子音 (p、t、k など) から始まる名前は、より覚えやすいと示唆していますが、他にも言葉の象徴体系ついての研究などがあるので、ぜひご覧ください。
シンプルであること。一般的な言葉 ( 例 : Apple、Indeed 等 ) が別の意味で使用されることはよくありますが、これは、豊かな脳内イメージをプロダクトに組み合わせるのに役立ちます。一般的な言葉を使用する際には、検索での発見しやすさは限られることには留意しておきましょう。覚えやすいのであれば、既存の言葉に若干手を入れる( 例 : Lyft 等 )ことで、これは解決できるでしょう。
すでに使われていること。全く新しい言葉でも可能です。新しい造語を生み出すのも、戦略の一つです ( 例 : Google、Intel、ソニーや Garmin 等 )。しかし、名前を確立させるまでに、より多くの初期準備が必要となります。社内データプロダクトのローンチの場合の関係者層、そしてタイムフレームには適していないかもしれません。
ブランディング可能であること
プロダクト名には一貫して、データプロダクトの独自性を表し、全体的にポジティブな雰囲気を持たせることが望ましいでしょう。これにより、ツールやドキュメンテーションにシームレスに名前を反映することが可能となるからです。
利用可能であること
他の人がデータプロダクトに同じ名前をつけていないかどうか確認しましょう!
名前を決めたら、ロゴを作って装飾しましょう。ロゴは、同じ MBA の原則に乗っ取って定型化された MBA である名前でかまいません。Font Meme フォント変換のようなショートカットは、手早く十分なデザインを作ることができます。
以下はその一例です。
2. プロダクトをドキュメント化する
自分が書いたコードがどんな働きをするかはわかると思います。けれど、CEO や新しいインターンが「これは何をするものだろう?」という疑問を持った際に、あなたが不在で、質問に答えたりデモを見せたりできない場合どうすればいいでしょうか?
ドキュメンテーションは、データサイエンティスト/開発者にとって良い慣習なだけでなく、自分の成果を見つけてもらうきっかけになります。事業が求めているプロダクトやサービスを、別の事業が提供しているか調べるため、まず Google 検索を行う事業は 71% に上るそうです。同様に、wiki の作成や、コードへのコメントは、ユーザーグループにとって有益であることに加えて、検索可能なコンテンツとなり成果物が見つけてもらいやすくなります。
ドキュメンテーションを作成する際には、以下の点を特定しましょう。
- そのデータプロダクトが解決する一番の問題
- 主な特徴と解決方法
- 主要な定義
- 解説が必要となる、主要な技術的視点
プロダクトの開発過程をドキュメント化すると、プロダクトへの信頼を築きやすくなります。ドキュメンテーション内に、MBA の名前やロゴを含み一貫した文言を使用することで、さらにブランディングを進めることができるでしょう。
3. チャンピオンを特定する
あなた以外の誰が、あなたが解決しようとしている問題や、そのデータプロダクトがどんなソリューションを提供するかについて、理解していますか?
その問題の影響を受けている人を探し出し、自分の成果物を共有しましょう。そして、ビルドに参加したり、あなたのプロダクトを理解しているチームメンバーに目を向けましょう。こうしたチャンピオンたちは、このソリューションを評価するであろう他の人たちに、あなたの成果を薦めることができるのです。
チャンピオンの特定は、消費者を対象とした事業におけるカスタマーアドボカシー(注:口コミを主とするマーケティング手法)と似ています。購入を決める際に、口コミは、国や世代を超え た83% の消費者にとって主要なインフルエンサーとなっています ( 出典 : ニールセンによる調査 )。あなたのデータプロダクトのチャンピオンはトップのセールス人員となり、あなたが不在でも、ツールへの信用を与え、質問に答えてくれるでしょう。
4. タイミングがすべて
ローンチの前には、現在の事業の状況を考慮し、ローンチのタイミングを適宜合わせましょう。データプロダクトの完成した時が、必ずしもローンチのベストタイミングではないからです。例えば、プロダクトチームは大きなバグの修正を行っているところで、新しいアイデアどころではないかもしれません。逆に、直近の関連した広報活動(ブログ記事など)が、クロスプロモーション(あるプロダクトで他のプロダクトを宣伝することなど)を利用したリリースなどに最適なタイミングかもしれません。
また、その他の最近のデータプロダクトが、いつリリースされており、どのような評価を受けているか調べましょう。関係者は新しいダッシュボードやモデルで溢れかえっていると感じているかもしれませんし、「分析まひ」(情報の分析に時間を割きすぎて思考停止すること)を引き起こすかもしれません。
5. 対象を把握する
もしあなたのチャンピオンが満足していないのであれば、プロダクトは一瞬で精彩を欠いてしまうかもしれません。チャンピオンやユーザーと良好な仕事での関係性を築くことは、データプロダクトの初期そして長期での成功に大切です。
あなたの作ったものを利用し、役立てることができるだろうオーディエンスを把握し、支援しましょう。このターゲット層を念頭に置き、チケットへのコメント、Slack への投稿、チャット、関係者グループにメールの送信、または直接ターゲット層との会話などを行いましょう。
ターゲット層に好まれているチャンネルを使い、開発の進捗や、リリース、そしてフィードバックをやりとりします。こうしたコミュニケーションの積み重ねはデータプロダクトに早期から信頼を築いて行きます。開発サイクルのリクエストがやってくる度に、リクエストへ思慮深い謝辞を述べることで信頼を築く機会を持てるでしょう。
機械学習のデプロイフレームワークを開発したソフトウェアエンジニア達が集まる Indeed のデータサイエンスプラットフォーム担当チームは、2017 年に、Indeed 内の複数のテックオフィスを各国で訪問し、データサイエンスのプラットフォームのフレームワークについて共有しました。これは、オフィス間のターゲット層と関わりを持ちかたとして非常に良い例です。
6. 発表する!
頭の中にある何かの仕組みを描けるのは、あなたしかいません。デモの実施は、新しいデータプロダクトがどんなものかを知らせる上で強力な手段となります。良いやり方としては、ミニマムバイアブル(実用できる最小限)なデータプロダクトやプロトタイプを早期にチャンピオンに提供することです。
例として、最小限データを利用して動作するアプリケーションの作成、ダッシュボードのモックアップのスケッチ、またはスクリーンショットの作成などが挙げられます。その他の消費者向けプロダクトの例は Forbes をご覧ください。セールスのリード対象を判定する機械学習モデルを、セールスの組織に説明するデモとして、プロダクトチームは、ユーザーがモデルの機能の値をスライダーで変更した際に、モデルの結果を返してくれるシンプルでインタラクティブな web アプリを作りました。
7. 結果に当事者意識を持つ
「私は賢いのではない。問題と長く付き合っているだけだ。」— アルベルト・アインシュタイン
あなたは、自分のデータプロダクトの理論的基礎や実装を気に入っているかもしれません。しかし、最終的にデータプロダクトの成功を決めるのはユーザーです。長期的なマーケティングとユーザーの定着は、どれだけあなたが信頼を保証できるかにかかっています。信頼性は、あなたのデータプロダクトのブランド、あなた自身の評判、そして技術的な信用度を築く上での鍵となります。これはその他の、現在または将来あなたのデータプロダクトをマーケティングする際にも影響します。注目すべきなのは、これは完璧という意味ではないことです。問題に素早く、完全に、そして透明性を持って取り組む、ということを意味することが多いです。
データプロダクトの主要な指標を監視し、動作やどこに影響を与えているかを確認しましょう。積極的にフィードバックを求め、対応しましょう。データプロダクトが元々の目的を達成しているか評価をし、改善することでターゲット層にさらに適応できるか判断をしましょう。
もし影響が出ていない場合や、ツールが利用されていない場合、あなたが解決をしようと考えていた問題に対する当初の推測をもう一度見直しましょう。そして、何が機能していないのかユーザー(または非ユーザー層)から話を聞きましょう。壊してまた始め直し、そして新たな視点でさらに良いものを生み出す心意気を持ってください。データプロダクトの開発を続け、改善を行うには忍耐力が必要となりますが、データプロダクトの質を向上し、その他のマーケティング活動に役立つはずです。
最後に
分析コミュニティ外部のチームが、チームや企業がさらに効率化できるあなたのデータプロダクトについて知るかどうかは、あなたのマーケティング活動次第です。プロダクトについて周知を開始するのは、プロダクトの完成まで待つ必要はありません。初期の要件が集まり次第、ドキュメンテーション作成、チャンピオンの特定、そして支援活動などからマーケティングを始めましょう。
とは言え、質の高いデータプロダクトを作り出すのはデータサイエンスをマーケティングすることよりも重要な事柄のため、何をマーケティングするか選びましょう。データサイエンティストの信頼性は、あなたのデータに基づく提案と行動を信用する上で重要となります。賢くそれを育てるようにしてください。
もしあなたがデータプロダクトを開発し、それが結果を出せるようにすることに情熱を感じている場合、Indeed のプロダクトサイエンスおよびデータサイエンスについてご覧ください。