データサイエンティストから見た Indeed の新人研修プログラム
もしあなたが新しい職場での初日に、三ヶ月間で求職者の仕事探しに役立つプロダクトを作るようにと言われたらどうしますか? (Indeed は14年もの間それを開発し続けています。)
私が Indeed の新入社員に向けた研修プログラム、Indeed ユニバーシティで経験したのは、まさにこれでした。データサイエンティストとして、どうやって貢献すればいいのだろう?初めはおじけづきました。ソフトウェアプロダクトの開発、それも開発の初期段階から携わるなんて、ほとんどのデータサイエンスの仕事には、十分なデータにはならないかもしれません。
Indeed では、データ収集と分析から、本番環境でのモデルのデプロイまで、全てのデータサイエンスの作業を手助けできるように、フルスタックのデータサイエンティストを求めています。ただし、Indeed では React のコードを書けて、ログのインフラのビルド方法を議論できることを求められます。こうなると、まったく別の話になります。
幸い、私はプログラムを無事終えることができました。その過程で、他では得られないような貴重な経験をしました。
Indeed ユニバーシティとは
Indeed ユニバーシティ (以下 IU)は、新卒で Indeed に入社した社員のための三ヶ月に渡るプログラムです。同時に、IU は新入社員を教育し、また新しい革新的なプロダクトを生み出す場所でもあります。社員たちは、エンジニアリング、プロダクト、SRE、データ/プロダクトサイエンス、そしてオンラインマーケティングなど様々な分野から集まっています。
IU 参加者とリード (2018 年シアトル)
IU の開始段階では、誰でも新しいアイデアを提案することができます。求職者や採用企業が実際に抱える問題を解決するためのものであれば、どんなアイデアも歓迎されます。そこで参加者は、自分が一番解決したい問題に基づいてグループを作ります。これらグループは、3 名から 5 名の新入社員とリードとなる先輩社員で構成され、共通のビジョンと本物のマーケティング費用(何千万にものぼる実際のユーザーにアクセスするため)をもって、グループは新しいプロダクトのビルドとテストを行います。
価値を認められたプロダクトは継続され、そうしたプロダクトをローンチしたメンバーには、正式なプロダクトチームを作るチャンスが与えられます。
私たちがビルドしたもの
私たちのチームには、2 名のソフトウェアエンジニアと、データサイエンティストの私がいました。みんなで異業種への転職を考える求職者のためのプロダクトをビルドしました。
私たちの目的は、求職者の次の仕事になりうる業界を発見する手伝いをすることでした。このプロダクトは、ユーザーに現在の業界を入力してもらい、それに最も関連するおすすめの新しい業種を表示するものでした。
また、必要となるスキルや、給与、同様のキャリアチェンジを行なった求職者の割合などの関連情報をユーザーに提供しました。
チーム内での私の役割
Indeed では、データサイエンティストはプロダクトチームに参加し、プロダクトに関するチームの意思決定に関与する機会が与えられています。しかし、一般的には新人のデータサイエンティストが、プロダクトのフレームワークのデザインに関する議論をリードしたり、プロダクトの次の目標を決めたりはしません。予備的なデータサイエンスや、モデルの構築やデプロイなどを、より一般的な業務として想定するのではないでしょうか。
IU では、各自の役割はもっと柔軟です。自分でも予想していた通り、A/B テストをデザインしたり、テストの分析を行い、チームがデータに基づく意思決定を行えるように手助けをしました。また、プロダクトマネージャー、マーケティング分析、UX リサーチャー、そしてパートタイムのフロントエンドエンジニアとしても働きました。プロダクトマネージャーとして、私はプロダクトの指標の定義と追跡、そしてチーム内の作業の優先順位を決定していました。マーケティングアナリストとしては、Google と Facebook 上でのプロダクトのマーケティングキャンペーンや、Indeed 内部の広告システムを担当していました。広告をデザインし、予算設定を行い、最も効果のあるチャンネルで予算を消化できるようにしました。UX リサーチャーとしては、プロダクトに対するユーザーからのフィードバックを得るため、アンケートを作成し公開しました。時には、オフィスを出てインタビューを行うこともありました。
データサイエンティストが IU に参加する理由
IU にデータサイエンティストが参加することは、関わる全員に価値をもたらします。データサイエンティストは、独特の経験を提供できますし、IU は他では得難い貴重な一流の知識を与えてくれます。
1. データドリブンな意思決定を現場で観察できる
Indeed では、プロダクトに関する意思決定はデータによる裏付けを求めます。IU を通して、私も「全てを A/B テストする」ということの意味がわかりました。私たちのチームが IU で作ったプロダクトの開発がどんどん進められるにつれ、私たちは常に、「次はどんな機能をプロダクトに追加すべきか?」と自問していました。簡単な答えは「一番好きなもの」ですが、正答は「作業量に基づいて優先順位をたて、A/B テストをする」ことです。どの機能が、最も少ない作業量で最大の影響力を持ち得るのか、判別する必要があります。そして、テストで影響力を示した機能だけが、本番環境に残されるべきなのです。
厳格な A/B テストは、成功指標の定義や、A/B テストの要件定義、そして A/B テストの分析など、多くのデータサイエンスの作業を必要とします。データドリブンな意思決定を経て、プロダクトが成長しユーザーベースが大きくなるにしたがい、しっかりしたプロダクトというのは、エンジニアリングだけでなく、科学的な取り組みを必要とするのだ、ということを私は目の当たりにしました。
2. Indeed.com の仕組みを学ぶ
プロダクトが、2 万人以上のユーザーを惹きつけたにも関わらず、最終的に廃止となってしまったのは、Indeed の求人検索のような成果を出せなかったからです。多ければ多いほうが良いと考え、新しい機能を追加して、ユーザーに必要な情報を可能な限り提供し続けたいと考えていました。しかし、わかったことは、機能が増えると、プロダクトはさらに複雑になるということでした。どんどん入り組んでいくシステムを操作しなければならなくなって行き、必然的に、多くのユーザーが離れていきました。
Indeed のシンプルでありながら効果的なキーワードと勤務地を入力させるだけの検索インターフェースの価値を本当に理解するようになりました。Indeed が自社が行うべきことを熟知していることが、よくわかりました。さらに一般的なルールとして、様々な異なる機能を作ることよりも、一つの機能にフォーカスして、それを磨いていくことの方が、もっと効果があるということもわかりました。
3. 全体像を把握する
データサイエンティストの仕事は、しばしデータ収集するところから始まります。時には、私たちはデータの裏にあるものをじっくりと見ることができないかもしれません。どのように保存されているのか?どこからきているのか?データをすぐに利用できるように、どのようなアーキテクチャが用意されているのか?一からプロダクトをビルドすることは、データサイエンティストに、デザインや開発プロセスを、もっと総体的なレベルから見るチャンスを与えてくれると思います。なので、こうした過程から派生するデータサイエンスの問いを、より重要な視点から考えることが可能になります。
4. 共感力を育てる
データサイエンティストとして、私たちの仕事の多くは、ソフトウェア開発者や、プロダクトマネージャー、そしてチームの他のメンバーとの効率的なコミュニケーションと共同作業を伴います。他のメンバーの立場になってみることで、彼らの業務や、データサイエンティストとしてどうしたら他の人が仕事をしやすくできるか、ということに対する理解を深めることができました。
5. 楽しむ !
そして、私たちには色々な楽しみもありました!オフィスに遅くまで残る日も何日かはあるかもしれません。けれど、その頑張りと同じくらい、様々な面白い催し物があります。どの都市で IU が開催されるにしても、その街を知る機会が設けられると思います。プログラム期間中、IU ではあらゆる種類のイベントが企画されています。クルーズ、脱出ゲーム、素敵なディナー、ゴーカートに VR 企画など…何でもあります。
また、IU では大学と同じように世界中から集まった人たちと出会い、近しい関係を築くことになります。アイデアが、実際のユーザーに役立つ、本物のプロダクトになっていくのを目の当たりにするでしょう。安全地帯を抜け出し、自分の得意分野以外のスキルも育てていくのです。こうした話に興味を持った方は、Indeed で現在採用中のデータサイエンティストとプロダクトサイエンティストの求人をご覧ください!